これねぇ、水道工事屋の叔父さんから聞いた話なんです。
その日の現場は、
千葉で有名な沼のすぐ近くだった。
辺りは雑木林になっていて、
昼間なのになんだか妙に薄暗い。
ここっていうのは、
昔から色々な噂があるようなところなんです。
で、今回の工事ってのは、
大きな機械でもって地面を掘って、
そこにパイプを配管する。
手慣れた職人にとっちゃ難しい工事じゃあないんだ。
叔父さんも陽気な人だから、
鼻歌交じりで始めたんでしょうねえ、仕事を。
で、まぁ機械ですから、当然、
ガガガガガッ、ガガガガガッ……
ものすごい音が出るんですよ。
昼間だし、
近所に民家も何も無いもんだから、
気兼ねなく音を出して作業していた。
ガガガガガッ、ガガガガガッ……
掘りながら、
だんだんだんだん沼に近づいていったんです。
すると、
大きな機械の音に混じって、
何か聞こえてくるような気がするんだ。
――ん?あぁ、音に驚いて、鳥か虫でも鳴いてるのかなー?
なんてことを思いながら、また、
ガガガガガッ、ガガガガガッ……
さらに沼へ近づいていった。
ガガガガガッ、ガガガガガッ……
ガガガガガッ、ガガガガガッ……
「うるさい……」
若い女の声でハッキリと、
『うるさい』という声が聞こえたんだ。
それも、すぐそこでこっちに向かって喋ってるような、
そんな感じだった。
あぁ~若いお姉ちゃんがお散歩中だったかな~
なんて思いながら機械を止めて、ヒョイッと見た。
居ない。
あらっ?と思った。
見ると、声のしたところ、
そこは高ーいフェンスが張り巡らされていて、
雑木林になってる。
で、そのすぐ向こうは沼。
人が来れるようなところじゃないんだ。
声がするなんてありえない。
不思議な話もあるもんですねえ……。
ちなみに沼の女は帰り際、
後片付けの掃除をしているときにも
「こっちも、こっちも」
って言って掃除を促したそうです。
女は幽霊になっても綺麗好きですね……
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