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扉の無い便所に入った時、 便所の電灯が点いた。 - 超怖い話 実話

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扉の無い便所に入った時、 便所の電灯が点いた。

IMG_1906.jpg


俺は神戸出身で、
今は留学中だが、
神戸であったある夜の話だ。

いかんせん作り話でないため、
因果関係が複雑だ。

色々な出来事がこの一夜を成している。
語り始めることにする。

その頃、俺はある所でバイトをしていた。

客の少ないある夜、
俺と二人で仕事していた

先輩のKさんが、
友人から聞いたという話を俺にしてくれた。

Kさんはパンクマニアで、
その話もロッカーの仲間と飲む中で、
その一人が話したのだそうだ。

長話をして
Kさんから詳しく聞くわけにはいかなかったが、
以下のようなことだった。

「その人が友達と酔っ払って、
真夜中の通りをぶらぶらしてたら、
廃墟を見つけたんだって。
酔った勢いで入ろうとしたら、
ドアが開いていて、簡単に入れた。

中は凄い荒れていて、
昔の本が散らかっていたらしい。
ひとしきり調べると、
地下に入る扉を見つけたんだって。
流石に気持ち悪いけど、その人入ったらしい。

それは大きくも小さくもない部屋で、
なんか箱がずらっと並んでいた。
何だこれと思って近づいて見たら、
その全部が棺桶だったらしい。

しかもひとつひとつ壁に遺影が架けられていたんだって。
それを見てこれはヤバいって逃げたらしい」

Kさんはまたこんなことも言っていた。

「それからしばらく経って、
また夜遅くにその人たちがそこ行ってみようって言って
行ってみたんやて。
今度は懐中電灯も持って。

で、建物に入ろうとしたら、
ビルの陰からこっち見てる女を見つけたんやって。
それは婦警の格好をしていて、
ずんずんこっちに近寄って来たらしい。

その人たちは自分たちが懐中電灯持って建物入ろうとしているから
怒られるんじゃないかと思って皆逃げたけど、
よく考えたらそんな夜中に婦警が居るはずないって気付いて、
それじゃあの女誰なんやって皆怖がったらしい」

Kさんは

「俺は絶対そんな所行かへん」

と言っていたが、
俺の頭には残っていた。

この廃墟のことは一旦置いておいて下さい。

一つをちゃんと話すには十を話す必要がある。

俺はちゃんと話したいと思う。

舞台は全く変わる。

俺は、神戸港湾地区の、
ある生糸工場に行ったことがある。

今はもう、人の居ない、旧生糸工場だ。

夕方、一度だけそこに入ったことがあったのだ。

それは赤煉瓦造りの大きな洋風建築だった。

時代の中で、違和感を持つ、
孤島のようなものだ。

建物の中は暗く、冷たく、沈静した空気と
黴の匂いで充ちていた。

建物は大きく、複雑で、迷宮のようだった。

私は友人のGと二人で歩いていた。

工場には昔の蚕の繭が
そのまま残っていたりした。

私たちはある奥まった廊下の壁に、
地下へと続く入り口を見つけた。

その先は真っ暗だったが、
携帯を持っていない俺はiPodを、
機械に強いGはiPadをそれぞれ光らせ、
微かに足元を照らした。

それで分かったのは、
それが完全な地下ではなく、半地下らしく、
また、天井が異様に低いということだった。

私たちは、
二人とも身長が180cm以上あり、
屈まなければ頭を擦ってしまうようだった。

この異様な空間を俺たちは誰にも知られることなく
(そう信じているだけだが)進んだ。

そして、闇があった。

もちろん、
既に私たちの電子機器の他に光は無いのだが、
私たちの数歩先のそれは、
光を当ててもただただ吸い込まれるようで、
何も見えなかった。

私たちは進みかけた足を止めて、
その闇の周りを照らしてみた。

コンクリートの枠が見える。

錆びた金属のプレートが見える。

それはエレベーターの穴だった。

この建物にこれほど深い地下があるとは知らなかった。

私たちは引き返し、元の廊下に出た。

真っ赤な夕陽が差し込む旧生糸工場四階の静寂は、
そこを歩いた者にしか分からないかも知れない。

静かに静かに、沈静しているようで、
思わぬ時に黄黒白青赤のどぎつい配色で
げらげら笑いが始まりそうな、
それを怖れさせるような、
そんな静寂なのだ。

私たちはギシギシと軋む木板の廊下を進んだ。

そういえばあの時俺たちは
どこへ行くつもりだったのだろうか。

なぜ歩いていたのだろうか。

分からない。

私たちはある部屋の扉を引いた。

部屋は無数にあったが、
鍵のかかっているものがほとんどだった。

資料室のプレートが傾くこの部屋の扉は開いた。

日没の中で暗黄色に染まったその部屋は
やはり時間の中で静かだったが、
物陰に潜んだ狂人が何時笑い出して現れるかと
俺を不安にさせた。

その部屋の雰囲気は、
小学校の中の使われなくなり
物置にされた教室によく似ていた。

そこは資料室というだけあって、
雑然としていながらも、
アルミの棚が出鱈目に立っており、
ファイルや繭が入っていた。

私はひとつの扉を開けた。

職員室の鍵かけのように、
たくさんの鍵がぶら下がっていた。

今となっては不可解な行動だが、
私はその中から「玄関」と書かれた鍵を取り、
ポケットに入れた。

私たちは他にも棚を開いた。

大きめの額縁に入った写真があった。

それは異様なものだった。

写真自体は比較的新しそうだが、
はっきりといつ頃なのかは分からない。

ただ、写真の中で、
ぼやけた薄緑色を背景に、
ふわふわした白いシャツと紺のロングスカートを履いた女が、
手を広げてこちらに微笑んでいる。

おかしいのは、
女から手が何本も生えていることだ。

いや、そう見えるよう撮ってあるのだ。

同じ格好をした女たちが縦に重なっているのだ。

手だけを生やして。

千手観音のように。

その異様な雰囲気と女の笑顔が、
俺に新興宗教を感じさせた。

うわっ、と思い、
そのままGと工場を出た。

すぐに日が沈んだ。

これでようやく下地が揃ってきた。

表現が感傷的なのは、
日頃よりの癖だ。

この方が俺は書きやすい。

理解を願う。

その年の暮れ、
私はある人間関係、
正確には男女関係の醜悪な混乱に憔悴していた。

Gもそれと深く関わりがあり、
私は夜のバイトを終えてから
その間待っていたGと二人、
大いに飲み、泣いて酩酊した。

ウイスキーの瓶を片手に神戸の人工島で叫んだ。

泣いて歌い、彷徨いながら、
二人はこの夜の過ごし方を考えていた。

家にも帰らず、
眠らないに決まっているからだ。

度胸試しや怖いもの知らずの吹聴などは、
本人が弱っている時や、
元々弱い者がすることに違いない。

Gは俺にあの鍵を持っているかと聞いた。

今はもう真夜中だった。

私は持っていた。

人一人歩いていない地区をゆきながら、
私は扉など閉まっているに違いない、
そしてこの鍵では開けられないだろう、
と心の中で言っていた。

真夜中の旧生糸工場は、
見るからに、やはり、日のある時とは違っていた。

私たちはしばらく門の前で躊躇した後、
鍵を穴に当てた。

しかし、それは合わなかった。

私は内心ほっと胸を撫で下ろし、
Gと顔を見合わせて微笑み、
扉にもたれた。音も立てずそれは開いた。

私たちは吐きそうになるほど動揺した。

ありえないことだった。

建物の中はもちろん闇である。

私たちは覚悟を決めて中へ入った。

生ぬるく扉が閉まった。

自分たちの存在を知らせないよう、
私たちは明かりを点けないでいた。

足音も殺した。

しかし、それは何のためだったのだろう。

私たちは、
いったい何に自分たちの存在を知られたくなかったのだろう。

これに答えるのは勇気のある者だ。

私たちは数歩行って、
闇に包まれながらも、
私たちの目の前に何かがあるのを感じ、
立ち止まった。

「居る」ではなく「ある」とするのは、
目前の恐怖を認めたくない心理が働くからである。

いつか夕刻に入った時には
そこには何も無かったのに。

ついにGがiPhoneを正面に向け、
ディスプレイを発光させた。

顔があった。

身長180cmを超える私たちの、
更に10cmは上で、
白い顔がこちらを向いていた。

心臓を強く打たれた者が大声で叫んだり
激しく動いたり出来ぬように、
私たちの反応は酷く緩慢だった。

のろのろと後ずさり、
ゆっくりと光を上下させる。

それは人ではなかった。

まずは安堵したが、意味が分からない。

暗闇の中、
チューリップを模した悪趣味で
巨大な造形物が置かれているのだ。

顔は、ちょうど花弁の一枚に貼り付けられていた。

意味が分からない。

私たちはなぜそれで帰らなかったのだろう。

どうして奥へ進んだのだろう。

光の無い廊下を進んでいった。

私たちは終始無言だったが、
自分たちが向かっている先を、
二人とも知っていた。

あの半地下へ。

俺たちは冷たいコンクリート壁に沿って行っていた。

あの入り口に接した柱の前まで来た時、
後ろから高い声がした。

叫び声とも笑い声ともつかないその声は、
廊下のずっと後ろ、
私たちが来たよりも向こうから聞こえているようだった。

恐怖を自覚した。

Gも振り返って震えている。

私たちは柱の向こうに回り込んで息を潜めた。

声は決して大きくない。

むしろ消え入りそうにも聞こえる。

そして断続的に聞こえるのみである。

しかし確かに近付いてきていた。

私たちの片側に、
あの入り口があった。

このままここに居てはいけないと
二人とも同時に思った。

私たちが来た方に、便所があった。

私たちは便所に身を隠すつもりだった。

泣きそうになりながら真っ暗な廊下を横切り、
扉の無い便所に入った時、
便所の電灯が点いた。

私たちは固まった。

終わったと思った。

完全に私たちの存在と居所が知られてしまった。

知られてはならない者に。

便所は恐らく便所内の動きを感知して点消灯するもので、
まさか旧工場の便所がそうであるとは思わなかったのだ。

恐らくとしか書けないのは、
そうでない可能性を私が知っているからだ。

私たちは互いを向き合う形で密着し、
一つしかない洗面台の前で固まっていた。

私はGの肩越しに
鏡に映った入り口が見えていたし、
Gも入り口から目を逸らさなかったに違いない。

私たちは硬直していたが、
物音も無く、明かりが消えた。

私たちは息を殺し続けた。

私は自分が一時間後
今のこの瞬間を回想しながら
外を歩いていることを心の底から願った。

足音がした。

またした。

している。

近付いて来ている。

こちらに来ている。

すぐそばに止まった。

便所の電気が点いた。

意味不明である。

何者も便所に入ってきていないはずなのに。

また電気が落ち、
私は心を決してGと便所を飛び出し、
迅速に廊下を戻り、
造形物の脇を走り抜けて
旧生糸工場から飛び出した。

外に出た私たちは
もう十年振りに呼吸が出来たかのようだった。

建物から数歩離れて
恐怖の呪縛から解放された俺たちはまず
「おいおいおいおいおいおい」と言って
それが止まらなかった。

建物の中で現実だったものを
処理し切れなかったのだろう。

俺たちがようやくまともに喋れるようになったのは
建物から百メートルも離れて橋の上を歩き出してからだった。

口々にいったい何が起こっていたのかと
次々と可能性をまくし立て合った。

若者たちの肝試し、警備員の巡回、ヤンキーの溜り場…。

ふと振り向いた。

生糸工場があんなに遠い。

だけど私たちは見た。

建物の裏側、
二階と三階を結ぶ階段の辺りを、
非常灯色の薄緑の光がゆっくり動いているのを。

俺たちは色々な話をしながら
長い橋を渡った。

ゆく先も無く。

こんな夜はこんな風にやってはならない。

何かが自分たちを導いている。

無意識でさまよってはならないのだ。

俺たちは別の人工島に入り、
見たことのない公園に少しの間居ただけで、
また元の方角を向いた。

どうして自分が
あの時Kさんから聞いていた廃墟の話を
Gに話したのか分からない。

先の恐怖を別の恐怖で誤魔化そうとしたのかも知れない。

僕が持っていた情報は、M町あたりにある廃墟で、
中に棺桶がびっしり並んだ部屋があるということだけだった。

僕がGに話したのは、
どうせ見つからないと思っていたからかも知れない。

しかしGはその話に興味を持ち、
その廃墟を探すことになってしまった。

もう夜の一時を回っていたのに。

僕はその街で子供時代を育ったので、
廃墟のありそうな場所には
いくつか心当たりがありました。

しかし、朽ち果てた家々や
不気味な廃墟をいくつか見つけるも、
どうもそれらしいものが見つからず、
足を棒にしてM町から随分離れたところまで探しました。

僕たちがこんな目に遭ってもまだ歩き続けているのは、
この夜の過ごし方を分からなかったからかも知れません。

私たちは深夜三時頃、
ついに見つけました。

それは一見してそれと分かった。

圧力が違った。

私たちを殺しにかかっているかのようだった。

見た瞬間、
飲みながら歩いていたウィスキーのアルコールが
すべて失せるのを感じた。

圧倒された私たちは、
入り口の前に立つことすら出来ず、
建物の周りを亡者のように二周した。

驚くべきことに、
廃墟から二十メートルほどの場所に、
私が通っていた幼稚園があった。

また、さらに近くには
幼児期に入院した病院まであった。

嫌な感じだった。

扉は開いていた。

閉まることのないよう、
小ぶりのタイヤが挟んであった。

これから私はここに入るのかと思うと、
生理的嫌悪感で一杯になった。

それはラブホテルの廃墟らしかった。

建物の東側の外壁に
屋上から地面まで青い網をかけてある。

意味が分からない。

10cm程空いた扉の隙間から、
iPadで明かりを入れる。

様子を伺う。

木の腐った臭いがする。

次に紙の腐った臭い。

わずかに押し開ける。

ほんの20cmほどの隙間からは
すぐ左に積まれた本の山しか見えない。

古い本ばかりだ。

それも、内容に整合性が無く、
背には図書館のラベルが貼られたものが多い。

私たちはついに扉を開き、
足を踏み入れた。

何かがある。

足元を照らす。

何かが散乱している。

足を踏み込む。

音を立てる。

床が腐っている。

木の腐った臭い。

椅子。

小学校の教室で使う椅子。

五、六脚。

楕円を描いている。

内を向いている。

中心は。光を上げる。

祭壇があった。

私たちは叫び声にならない叫びを上げ、
外に出た。

俺は心が折れた。

棺桶のことは聞いていても、
祭壇への心構えなど無かった。

俺の心は一瞬で折れた。

もう二度と入りたくなかった。

数秒間見ただけだが、
それは確かに祭壇だった。

無茶苦茶な祭壇だった。

ぐちゃぐちゃと色々なものが並べられ、
両脇に仁王像のようなものと観音像のようなもの、
中央には何か神の名を書いたような
掛け軸がぶら下がっていた。

イエス像のようなものもあったと思う。

ぐちゃぐちゃと色んなものがあった。

そして俺は見ていた。

祭壇の左に掛かっていた白黒の額入り写真、
あれは遺影だ。

俺の心は打ちのめされ、
再び入るどころか
建物を見るのさえ耐えられなくなっていた。

しかしGは違った。

Gがアスペルガーであることと関係あるのかは分からないが、
Gはもう一度行こう、
そしてもっと奥まで行こう、
と言った。

彼はこういう時に止めてくれないのだ。

いつの夜だったか、
Gが公園に生えた高い木に登り出し、
見るからに枝が折れそうだったので、
私は下から何度もGに向かって、
降りてくれ、降りてくれ、と叫んだが、
彼は一番高いところに登っていった。

辛いものだ。

俺はGが一人でこの奥に行くと
無事に帰って来れない気がした。

結果から言うと、
棺桶のある地下室への扉は見つからなかった。

ただし、十分に探索したわけではない。

私たちは地下室を見つけたが、
そこには棺桶は無く、
四階まであるであろう中の二階まで歩いてみたが、
私には三十分程度がそこに居る精神的帰還限界点だった。

私たちは廃墟を後に、
朝を迎えた。

以上が私たちが体験した
この一夜の顛末である。

さて、ここで疑問だが、
廃墟の角には自動販売機が作動中だった。

飲料会社はいったい誰と契約している?

また、M町にあって
M駅まで徒歩数分という一級立地にあって、
なぜこの廃墟は解体されない?

別の夜にその裏通りを歩いていた私が
廃墟二階あたりから耳にした、
ゴスン、ゴスン、という音の正体は?

廃墟の正面にある駐車場、
廃墟の正面に政党の街頭演説車が停車していたことと関係は?
(何党だったかは忘れた。全国規模の政党)

そしてこれが一番大きな引っかかり……
兵庫県庁が目と鼻の先にあることとの関係…。

俺には、あの建物が、いくつかの要素から成る、
異様な力によって守られ、
壊されないでいる建物である気がしてならない。

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2019.08.08|Genre:|Thread:恐怖の体験話コメント(0)トラックバック(0)Edit
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