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大学に入学し友達も何人かできたある日の事、 - 超怖い話 実話

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大学に入学し友達も何人かできたある日の事、

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大学に入学し友達も何人かできたある日の事、
仲良くなった友人Aから、
同じく仲良くなったBとCも遊びにきているので、
今からうちに来ないかと電話があった。

時間はもう夜の9時過ぎくらい、
しかもAのアパートは俺の住んでいるところから
大学を挟んで正反対の方向にあり、
電車を乗り継いでかなり先にある。

時間もかかるし
ちょっと面倒なのだが、
特にすることもなく、
そのうえ土曜の夜で暇だった

俺はAのアパートへ向かう事にした。

乗り継ぎ駅のホームで待っているとき、
ふと気付いたのだがホームで
待っている人がやけに少ない。

「土曜の夜ってこんなもんだっけ?」

と疑問に思ったが、
特に気にもせず電車に乗り込んだ。

すると電車の中もやけに空いていて
酔っ払いらしい2人組みが乗っているだけだった。

特になんとも思わず席に座り、
携帯を弄りながらぼーっとしていると、
その酔っ払い2人も次の駅で降りて行き、
代わりに俺と同い年くらい?の女の子が乗ってきて
俺の向かいくらいの位置に座った。

最初は気付かなかったのだが、
ふと携帯を弄るのをやめて顔を上げると、
その女の子がやたら可愛い事に気が付いた。

黒のセミロングくらいの髪型で
ちょっと大人しめな感じ、
ぶっちゃけ言えばモロにタイプの子だ。

が、別に女の子と話したことが無いとかそういうのではないけど、
彼女いない歴=年齢の俺に声をかける勇気があるわけもなく、

「出会いなんてあるわけないよなぁ」

と心の中で思いながら
ふとその子を無意識に見つめてしまっていた。

しかも間の悪い事に
その子と目があってしまった。

「ヤバイ、キモいやつだとおもわれる!」

と慌てて目を逸らして
ずっと窓越しに外を見ていました風な態度を取ったのだが、
傍から見てもバレバレだろう。

目的地の駅はまだ5駅も先だ、
俺は

「どうしよう、次の駅で下りるべきか、
でもそれだと余計不自然じゃね?」

などとあからさまにキョドって葛藤していると、
クスクスと笑い声が僅かに聞こえてきた。

「え?」

と俺が正面を向くと、
女の子が俺のほうを見て楽しそうに笑っている。

そして、楽しそうに

「なんですかぁ?」

と俺に話しかけてきた。

「え?マジで?
何このマンガみたいなシチュエーション」

と思い浮かれまくりながらも、
表面上は冷静さを取り繕いながら

「いや…外を見ていただけだけど…」

と返すと、
あろう事かその子はクスクスと笑いながら

「私のこと見てたよねー」

と言いつつ
俺の隣へと移動してきた。

内心大喜びしながらも、
観念した俺は

「ごめん、見てました…」

と正直に答えた。

その後15分ほどの間だが、
俺はその子とかなり色々話した。

名前はアケミちゃんというらしく、
学部は違うが
俺たちと同じ大学に通っているらしい。

しかし、
その時は気付かなかったのだが、
後になってこの時の会話を思い返してみると、
明らかにアケミちゃんの言動はおかしかった。

最近話題になっていることを話したかと思えば、
急に何年も前の話をし始めたり、
時事関連も詳しいかと思えば

「この前の地震こわかったねー」

というような話には不自然なくらい反応が薄かったり、
同じ話を繰り返し出したかと思えば、
急に無表情で黙ってしまったり。

完全に

「可愛い女の子とお近づきになれた」

という状況に有頂天になっていたその時の自分は
まるで解らなかったけれど、
後から思えばなんといえばいいのか、
自分が見聞きした事ではなく、
他所から伝わった情報をただ聞きかじって覚えた

だけといえば良いのか、
上手く説明できないが、
そんな不自然さと違和感が
アケミちゃんの言動にはあった。

ただし、
浮かれまくっていたその時の俺にも
一つだけ気になることがあった。

電車が走り僅かに揺れるたびに

「カチ…カチ…」

とプラスチックのような
硬く軽い感じのものがぶつかり合うような、
なんか変な音がする。

俺は何の音だろうとあたりをキョロキョロしたのだが、
音の正体がわからない。

アケミちゃんがその様子を見て

「どうしたの?」

と聞いてきたが、
音の出所も解らないし、
別段気にする事もないと思った俺は

「いや、とくに」

と流した。

音の正体については
後でわかる事になるが…

電車が目的地の前の駅に差し掛かった頃、
アケミちゃんのバッグの中の携帯が鳴った。

バッグを開け、
携帯を中から取り出そうとしたとき、
俺はバッグの中にとんでもないものが入っているのを見つけて
一瞬思考が停止してしまった。

ボロボロにさび付いた異様にでかい中華包丁2本

明らかに10代の女の子が持つには
相応しくない代物だ。

というかこんなものを
日常的に持ち歩くやつがいるとは思えない。

明らかに異様な光景だ。

アケミちゃんは直ぐにバッグを閉じてしまったが、
俺の見間違いという事はない。

その間も「カチ…カチ…」と例の変な音はし続けていた。

そこで俺はやっとふと我に返り
状況を分析してみた。

「そもそもこんな可愛い子が、
目があったってだけで
唐突に声をかけてくるって状況がおかしくね?
そんな上手い話あるわけがねーよ、
この子ヤバイ子なんじゃねーのか?」

という疑念が出てきた。

疑念というより確信に近かったが…

そして、
このまま目的地の駅で降りるのはまずいと感じた俺は、
ひとまず次の駅で降りることにした。

ただし、
下りようとすると着いてくる可能性もある。

そうなると申し開きが出来ないし
余計にピンチになるのが解りきっているから、
電車が駅に停車し、発車直前、
ドアが閉まる寸前で降りる事にした。

そうこうしているうちに
電車が駅に着いた。

アケミちゃんはまだ電話をしているが、
チラチラとこちらを見たりもしているので
うかつに動けない。

目が合うたびに
背筋に寒いものを感じながらも、
愛想笑いを浮かべながらタイミングを伺うと、
発車の合図の音楽と同時に

「ごめん、ここで下りるから」

と一方的に言って電車を駆け下りた。

案の定、アケミちゃんは反応できず、
電車はそのまま発車し行ってしまった。

ひとまず難を逃れる事ができた俺は、
とんでもないものに出会ってしまったと思いながらも、
さてこれからどうしようかと考えた。

Aのアパートまではまだ結構距離がある、
というかまだこちらに来て2ヶ月も経っていない俺に、
ここから目的地までの道順など解るわけもない。

かといって次の電車に乗った場合、
次の駅でアケミちゃんが待っていたら余計にヤバイ。

仕方がなく、
俺はAに電話をして
後で事情を話すからと住所を聞き、
駅を出てタクシーでAのところまで向かう事にした。

アケミちゃんにもう一度出会うリスクを考えたら、
千数百円の出費のほうがずっと良い。

Aの家に着き、
かなりほっとした俺は

「おいやべーよ、
なんかすげーのに合っちまったよ、
都会こええよ!」

と大げさに、
かなり興奮気味に3人に事の事情を話した。

AもBもCも、
当然全く信じてくれず、

「嘘くせーw」

とゲラゲラ笑っていると、
ピンポーンとドアチャイムが鳴った。

時間はもう夜の11時近く、
こんな時間に来客など当然あるわけもない。

俺は

「いや、まさかな…完全に振り切っていたし」

と思っていると、
Bが冗談半分に

「アケミちゃんじゃね?」

と言い出した。

そこで自分で言ったBも含め、
俺たちはそこ言葉を聴いて凍りついた。

というよりも、
その言葉を聴いた俺が
真っ青な顔で動揺しているのを見て
色々察したといった方が良いだろう。

Aが

「おい、さっきの話マジなのかよ…」

と言いつつ、
ひとまずドアスコープで誰が来たのか確認してくると言って、
足音を立てずに玄関へと向かい、
暫らくすると戻ってきた。

そして俺たちに

「すっげー可愛い子が
ニコニコしながらドアの前にいるんだけど…」

と言ってきた。

その間も何度もチャイムが鳴らされている。

それを聞いてCが

「お前マジなのかよ…何で後つけられてるんだよ…」

と言ってきたが、
そもそも俺にもなんで後をつける事ができたのかがわからない。

俺は

「ひとまずほんとにアケミちゃんかどうか
自分の目で見てくる」

といって、
同じく足音を立てないように玄関に向かうと、
ドアスコープで外を覗いてみた。

そこには困惑気味な顔をしたアケミちゃんがいた…

これはかなりヤバイ。

てかなんで着いてきているのかと。

俺たちそんな仲ではなかっただろ?

ちょっと電車内で会話しただけだろ?

理不尽すぎね?と思いながら、
ひとまず部屋まで戻ると
3人に間違いなくアケミちゃんである事を伝えた。

そして4人でこれからどうするかを相談した。

まず居留守作戦は使えない。

部屋の電気がついているし、
さっきまで結構大きな声で話していたのだから、
在宅なのはモロバレだ。

次にひとまず俺はクローゼットの中に隠れ
Aが応対して、
俺の事を聞かれてもそんなやつ知らない、
何かの間違いだろうとしらを切る作戦を考えたが、
相手は文字通り「アレな人」な可能性があるから
それで納得するか未知数なうえに、
凶悪な武器持ちだ。

ドアを開けるのは危険すぎる。

そんな話をしていると、
外からアケミちゃんが

「○○(俺の名前)くーん、ここにいるよね?
入っていくの見てたよー、何で逃げるの?
酷いよ、ちゃんとせつめいしてよー」

と声が聞こえてきた。

Aが

「お前モロにつけられてんじゃねーか、
てか自分の名前言ったのかよ!
どうすんだよ!」

と焦り気味に言ってきた。

前の駅で降りて
ここまでタクシーできたのにどうやって後をつけたのか。

色々疑問は残るが、
今更そんな事を考えても仕方がない。

俺たちがそんな会話をひそひそ声でしていると、
今度はドアのほうから

キィ!ギギギギギギギギ!
キィ!ギギギギギギギギギギギギ!

と金属同士がこすり付けあうような、
非常に不快な音がし始めた。

Aがまたドアの方に行き
外をうかがって戻ってくると、

「おいなんかやべーぞ、
包丁でドアを引っかいてやがる…
マジでヤバイ人じゃねーか!」

と声を殺しなら言ってきた。

その間も

「○○くーん」

と俺を呼んだり

「ちゃんと出てきてお話しようよ」

と、行動と言動が全くかみ合わない事をやっている。

この騒ぎでお隣さんがキレてしまったのだろう。

ドアごしに

「うるせーぞ!何時だとおもってる!」

と怒鳴り声が聞こえてきた。

そして金属音もアケミちゃんの声も止まり
一瞬の沈黙のあと、

「うわっ!なんだこいつ!」

という声がして
その後にドアが激しくバタン!と閉まる音がした。

そしてまた例の

キィ!ギギギギギギギギ!

という音が鳴り響く。

何事が起きたのかと、
隣の人は大丈夫なのかと、
明らかに状況がどんどん悪化してきている。

俺たちはその後もあれこれと対策を考えたのだが、
その場の思いつきの付け焼刃でどうにかなるとも思えず、
どうすれば良いのかと考えていると、
外からパトカーの回転灯の光が見えた。

サイレンの音などは聞こえなかったが、
どうやら誰かが警察を呼んだらしい。

俺たちが助かったとほっとした瞬間、
外から

「待ちなさい!」

という声の後に、
誰かが駆け抜ける音がして、
その後直ぐに静かになった。

すると今度はドアチャイムが鳴り、
警察官が

「大丈夫ですかー?」

とドア越しに声をかけてきた。

どうやら助かったようだ。

Aがドアをあけ、
俺たち全員が事情を話すと、
どうもアケミちゃんは警官1人を突き飛ばすと、
アパートの一番奥のほうまでかけていき、
フェンスをよじ登り逃げて行ったらしく、
現在追跡中とのことだった。

俺は彼女がアケミという名前である事、
俺たちと同じ大学の学生であることをつたえ、
ターゲットがどうやら俺である事から、
暫らく俺のアパートの周囲を巡回してくれる事や、
緊急時の連絡先等を伝えると帰って行った。

ちなみに、
警察に通報したのは隣の人だったらしい。

隣の人が言うには、
怒鳴りつけた途端に
アケミちゃんが無言で中華包丁を振り回してきたので、
慌ててドアを閉めて警察に通報したということで、
特に怪我をしたとかそういう事ではないとの事だった。

ちなみに、
大学に該当する学生は在籍していなかったそうです。

というか、
警察は結局身元の特定すらできませんでした。

事件から1ヶ月以上過ぎ、
その頃になると警察も

「何かあったら電話してね」

と言って巡回してこなくなっていた。

俺自身、
もう流石に無いだろうと勝手に思い込み
かなり油断していた。

それがいけなかったのかもしれない。

その日俺は夜中に小腹が空いたので、
ちょっと何か買って来ようと
駅前のコンビニまで行く事にした。

時間は確か
夜の10時半か11時頃だったと記憶している。

コンビニで買い物をして外に出ると、
まだ終電の時間すら過ぎていないのに
駅前にやけに人が少ない。

前回と同じ状況なのに、
その時の俺はこんな事もあるんだなと
特に気にせず歩き始めた。

暫らく暗い夜道を歩いていると、
いつも通る公園に差し掛かった。

すると、街灯の明かりに
僅かに照らされてベンチに誰か座っているのが見えた。

ただ距離が少し離れていたのと、
街灯があるとはいえ
そんなに明るくないので
誰が座っているのかまでは解らなかったが。

「こんな時間になにやってんだろ?」

と思いながら公園を通り過ぎようとすると、
その人影がこちらに気付いて駆け寄ってきた。

シルエットからどうやら女のようだと気付いた瞬間、
俺は自分がいかにうかつな人間であるかを後悔した。

予想通り駆け寄ってきたのはアケミちゃんだった…

アケミちゃんはニコニコしながら

「やっと会えたね」

と嬉しそうだ。

手元には例の少し大きめのバッグも持っている。

どう見てもその中には
例の中華包丁が入っているのだろうことは
容易に想像が付く。

俺は何故かその時、
かなり混乱していたようで
こんな状況にも関わらず

「相手がアケミちゃんじゃなければ、
こんな最高なシチュエーションはないのに」

と、この期に及んで
わけの解らない事を考えていたのを覚えている。

そんな事を考えながらも、
なんとかして逃げないといけないとも考えをめぐらした。

アケミちゃんとの距離は
まだ4~5m離れている。

彼女はなんと呼べば良いのか知らないが、
履いているのはヒールのついたサンダルみたいな靴のようで、
明らかに走り難そうに見える。

ちなみに俺はスニーカー、
そのうえ高校時代はバスケ部だったので
そこそこ体力にも自信がある。

このまま走って逃げれば振り切れそうだ。

自宅の方向へ逃げるのは不味いと感じた俺は、
タイミングを見計らい道を90度曲がり
自宅とは別方向へ全力疾走した。

走りながら俺は警官に言われた事を思い出した

「携帯の番号登録しておくから、
話ができなくてもかけてさえくれれば
アパートにパトカーを向かわせるよ」

と。

慌てていつも携帯を入れているほうのポケットに手を突っ込んだのだが、
携帯が無い、

反対側とケツのポケットにも手を当てて確認したのだが無い。

そういえば、どうせ直ぐに戻ってくるしと思ったので、
携帯は充電器に差しっ放しで出てきたんだった…

俺は自分の迂闊さを心底後悔した。

たぶん1km近くは走ったとおもう。

今考えるとかなり不自然なのだが、
その間車は何台かすれ違ったが、
歩いている人には一切出会わなかった。

夜中の11時頃とはいえ
なんかおかしい。

偶然か?

もう流石に追ってきていないだろうと考えた俺は、
一端立ち止まり
これからどうするべきか考えた。

そこである事に気付き、
今来た道とは別ルートで
さっきの公園まで戻る事にした。

気づいた事とは、
その公園には今時珍しく
電話ボックスがあったのを思い出したからだ。

途中でアケミちゃんに出会うリスクはあるが、
今時「確実に電話ボックスがある場所」というのは
かなり貴重だ。

とにかく警察に連絡を取らないといけない。

俺は神経質なくらい慎重に、
曲がり角では特に細心の注意を払いながら、
かなり時間をかけて公園まで戻った。

公園につき周囲をうかがい
更に公園の周りを一周して確認したが
人影は一切無く安全そうだ。

安全を確認できた俺は
電話ボックスへと向かうと扉を開けた。

その時、俺の肩を誰かが叩いた。

「マジですか…」

このとき俺は一生のうちで
最大の絶望感を感じていた。

そして

「きっと彼女とは別の人だ」

という僅かな期待をもって振り向いた。

そこには、
当然のようににっこりと可愛らしい笑顔で
俺を見つめるアケミちゃんがいた。

「うへぇあああああああああああああああ!」

俺はかなり情けない叫び声を上げて
地面にしりもちをついた。

アケミちゃんはそれがおかしかったのか、
俺を見下ろしながらクスクスと笑っている。

その笑顔がやっぱりかなり可愛くて、
可愛いからこそよけいに不気味だった。

こんな情けない状況でも、
それでも俺は虚勢を張って

「この前と言い今回と言い、
なんで場所がわかるんだよ!」

とかなり強気に質問を投げつけた。

するとアケミちゃんは、
またクスクスと笑いながら

「だって、
○○君のジーンズのポケットの中に“私”がいるから、
どこにいてもわかるよー」

と言い出した。

訳が解らない。

こいつやっぱおかしい。

いわゆる「本物」ってやつに出会ったことは無いが、
これが本物というやつなんだろう。

俺があっけに取られていると、
アケミちゃんは

「お尻のほうの右のポケットだよー」

と言い出した。

どうやらポケットの中を確認しろということらしい。

逆らったら何をされるか解らない。

おれは地面に座ったまま腰を少し浮かせ
ポケットの中を確認してみた。

すると中に何か長細い物がある。

乾電池?と思いながらそれを取り出すと、
街灯の薄明かりに照らされたそれは
人の指のようなものだった。

「ううぇ!」

俺はまた情けない叫び声を上げて
それを地面に投げ捨てた。

が、投げ捨てて気付いたのだが、
触った感触といい質感と言い
どう見ても本物の指では無さそうだ。

どうやらマネキンか何かの指らしい。

するとアケミちゃんがにっこりと微笑みながら

「捨てちゃダメだよー」

と言いながら
指を拾い上げ目の前に屈みこむと、
俺のポケットに指を戻し、
そして耳元でこんな事を囁いた

「次“私”を捨てたら殺すから」

俺は何か言い返したかったが、
あまりの事に頭が真っ白になってしまい、
ただ顔を引きつらせることしかできなかった。

「ヤバイ、ヤバ過ぎる、
こいつとんでもない、
早くなんとかしないと殺される…」

しかし頭の中は完全にパニック状態。

とてもじゃないが
この状況で冷静な思考などできない。

するとアケミちゃんは

「こんなところで話しているのもなんだし、
○○君のおうちいこ」

というと、
俺の腕を掴み片手で引っ張り起こした。

一応書いておくと、
俺は身長175cm、体重は72kg、
説明するまでも無いが、
女の子が片腕で引っ張り起せるような体格ではない。

とても10代の女の子とは思えない物凄い力だ。

あまりの事に唖然としている俺の腕を引っ張り、
アケミちゃんはどんどん俺のアパートの方向へと進んで行く。

どうやら俺の住んでいる場所も
既に突き止めているようだ。

その時気付いたのだが、
また電車の時のように
カチ、カチ…カチ、カチ…と
プラスチックのような硬い軽い物がぶつかり合うような
変な音がしている。

アケミちゃんはニコニコと嬉しそうだ。

そしてようやく気付いたのだが、
どうやらこのカチ、カチという音は
アケミちゃんが歩くたびに鳴っているらしい。

その時はどこから鳴っているのかは
さっぱり解らなかったが。

歩きながらアケミちゃんはかなり嬉しそうだ。

そして俺の腕をしっかりと掴んでいて
離しそうにはない。

俺は自宅につくまでに
なんとかこの場を切り抜ける方法を考えなければと
あれこれ思考をめぐらした。

が、そうそうそんな良い方法が思いつけるわけも無く、
かと言って文字通りありえないレベルの「怪力女」であるアケミちゃんを
力ずくで振り切るなど不可能だ。

そしてなんら解決策が出てこないまま
とうとう自宅アパートに到着してしまった。

部屋に着くとアケミちゃんは
楽しそうに俺の部屋を物色し始めた。

「男の人の部屋てやっぱ結構散らかってるんだねー」

とか言いながら色々見て周っている。

が、
俺のほうは気が気ではない。

今は機嫌が良いが、
このあからさまなメンヘラちゃんが
いつ機嫌を損ねるか解らない。

そして機嫌を損ねたら恐らく俺は殺される。

すると彼女は

「部屋散らかっているし
片付けてあげるね」

と言い出した。

この状況だけ見れば
物凄く「おいしい」シチュエーションだ。

まるで付き合ったばかりの彼女を
初めて自分の部屋に呼んだような、
そんな状況と言っても過言ではない。

しかし、部屋にいるのは
巨大な中華包丁をバッグの中に隠し持った
コテコテのメンヘラさんであり、
俺はメンヘラさんに捕らえられた
哀れな獲物でしかない。

そんな事を考えていると、
アケミちゃんは例のカチ、カチ…カチ、カチ…という音をさせながら
部屋の隅に無造作に積み上げられた雑誌やマンガやテキストや
その他諸々を種類ごとにわけて整理し始めた。

その時、恐らく彼女は
髪の毛が邪魔に思ったのだろう。

少し無造作に自分の首もとの髪をかき上げた。

その時俺は信じられない物を見た。

アケミちゃんが髪をかき上げて見えた首筋に
薄っすらと線が入っており、
それは後ろの方まで続いているのだが、
丁度うなじの真上部分で
「縁が欠けている」ような状態になっていて
そこだけ「ちゃんとかみ合っていない」としか見えない状態になっている。

そしてそのかみ合ってない部分が、
アケミちゃんが動くたびに
カチ、カチと鳴っているのだった。

一瞬の事だったが見間違いではない。

明らかにアケミちゃんの首筋には
「つなぎ目」がある。

俺は頭の中が
???????
でいっぱいになった。

「なんだこれは?
俺の目の前にいるのは一体なんだ?」

ここにきてアケミちゃんは
危険なメンヘラさんであるという認識を改め、
なんだか良く解らない人間ではない何かの可能性が出てきた。

そんな事を考えながら
俺がアケミちゃんの首元を凝視していると、
それに気付いたのか

「なんですかぁ?
恥ずかしいじゃないですか」

とにこやかに笑いながら、
また部屋の整理をしている。

その時、
恐らく後で整理しようとしていたのだろう、
棚の少し上のほうに置いてあったテキストや辞書などが
アケミちゃんの頭に落っこちた。

ドザッ!と大きな音がして、
その後

「いったー」

と頭をさすりながら
どじっちゃいました的な顔をして
俺のほうを見た。

が、その姿は異様だった。

首筋に入った線のところから
明らかに首が「ずれて」いる。

アケミちゃんは

「あー…」

と言いながら首を元に戻すと、
何事も無かったように
また本や雑誌の整理をしはじめたのだが、
俺の頭の中はパニック状態だ。

「一体あれはなんなのか」
「俺は一体何を見た???」

意味不明すぎる。

一つ解った事は
俺の目の前にいる「それ」は
明らかに人間ではないということだ。

パニックになりながらも、
俺はこれからどうするべきか考えた。

すると、
ふとベットのところに置いてある
充電器にささったままの携帯が目に入った。

「これだ!」

警察官が言っていた。

電話さえすれば
返事がなくともパトカーで様子を見に来ると。

俺はアケミちゃんに悟られないように、
そして不自然にならないように、
可能な限り自然な動きでベットのところまで移動し
携帯のほうを見ようとすると、
アケミちゃんが

「携帯さわっちゃだめだよ」

と振り向きもせずに言い出した。

「洒落にならん…気づいてやがった…」

そのまま動く事が出来ず呆然としていると、
アケミちゃんがすくっと立ち上がり、
俺のほうへやってくると、
携帯を充電器から抜き取り
自分のバッグの中へとしまい、
何も言わずにそのまま部屋の片付けに戻っていった。

これからどうするべきか、
何か考えないといけないのだが、
あまりの出来事に動揺してしまい
思考が上手くまとまらない。

とりあえずあたりを見回してみると、
ふと中身が入ったままの電気湯沸しポットが目に付いた。

そこで、俺は
普段なら絶対に考え付かない方法を思いついた。

こいつは中に結構な量のお湯が入ったままだ。

こいつでぶん殴れば流石に…

俺は別にフェミニストとかそんなんではないが、
流石に普通なら女の子に暴力を振るうような事は躊躇われる。

が、今は状況が状況だし、
そもそもアケミちゃんは
男か女かとか以前に明らかに人ではない。

「躊躇われる」なんて
かっこつけていられるような余裕も無い。

俺は意を決してポットの取っ手を握り締めると

「うあああああああああああああああああああああああ」

と絶叫しながら
アケミちゃんの頭を全力でぶん殴った。

アケミちゃんは
そのまま壁の反対側まで吹っ飛び倒れた。

そして俺が様子を見ようとすると
ムクッと上半身を持ち上げ

「いったーい、何するの?」

と、
まるでおふざけて小突かれて
ちょっと怒った振りするような
そんな感じの返事を返してきた。

俺はアケミちゃんの姿を見て
恐怖心で動けなくなった。

返事が状況に似つかわしく無いからではない。

なんと説明すれば良いのか、
上半身を起き上がらせたときに、
顔の鼻から上といえばいいのか、
それとも眼窩の下の部分から上といえば良いのか、
その部分がボロッと顔面から落っこち、
「鼻から下だけ」になった顔がそんな事を言っていたのだ。

ありえない。

あまりの事に動けなくなっていた俺だが
直ぐに我に返り、
手に持っていたポットをアケミちゃんに投げつけると、
後ろを振り返り玄関へダッシュすると、
そのまま外へ逃げ出した。

そして道路まででると
一端アパートの方を振り返ったのだが、
そこでまたとんでもない物を目撃した。

俺の部屋は2階にあるのだが、
アケミちゃんが部屋の窓から身を乗り出し、
片手に中華包丁を、
もう一方の手に自分の頭のパーツを掴み、
丁度俺のほうを見ながら
下へと飛び降りるところだった。

俺はもう頭はパニック状態、
ションベン漏らしそうになるほど恐怖し、
いい年こいて涙目になりながら
もう道順も目的地も何も関係無しに
全力で逃げ出した。

後ろのほうから、
かなり遠くにだが
カチカチカチカチ…と音がする。

恐らくアケミちゃんが俺を追ってきている音だ。

俺は

「追いつかれたら確実に殺される」

と思いながら、
ふとさっきアケミちゃんが言っていた事を思い出した。
「“私”を捨てたら殺すから」と。

“私”ってどういう意味だ?

本体はあの指ってことか?

意味が良く解らないが、
とにかくこれが鍵になりそうではある。

しかしどうしたらいいのかは解らない。

捨てなければ
どこまでも追いかけられるだろうし、
しかし捨てたら殺すと言われた。

だが、そもそもこの状況。

どう考えても指を捨てようが捨てまいが
追いつかれたら殺される。

こうなってくると、
問題は捨てるか捨てないかではなく
「どう捨てるか」だ。

そんな事を考えながら走り続けていると
大きな道路に出た。

そして、
その道路を渡った100mくらい先のところに、
神社らしき鳥居が見える。

俺は何の根拠も無く

「これだ!」

と思った。

もうヘトヘトに疲れていたが、
最後の力を振り絞って全力疾走すると、
道路を横断し鳥居を潜り、
ポケットの中から例の人形の指を取り出すと、
それを拝殿の中に投げ込んだ。

それと同時に、道路のほうから

キィィィィィィィィィィィ!

と車が急ブレーキを踏む音が聞こえてきて、
その後ドンッ!と結構大きな音がした。

鳥居越しに車が停まっているのが見える。

もしかしてアケミちゃんを轢いたのか?

そんな事を考えながら恐る恐る道路に出てみると、
30代くらいのおじさんが車の前に立って
どこかに電話している。

様子から察するに警察か救急車だと思われるのだが、
不思議な事にあたりを見回しても
それらしき人影が無い。

俺が

「どうしたんですか?」

とおじさんに声をかけると、

「それが…今人を轢いちゃったはずなんだが…
見ての通り人なんていないんだよ、
でとりあえず警察にとおもって」

という。

タイミング的に
明らかに轢かれたのはアケミちゃんのはずなのだが…
とふと道路の端のほうを見ると、
なんかの残骸みたいなものがいくつか転がっている。

恐る恐る近付いてみると、
それは人形の残骸だった。

そして、
胴体や足の部分の衣服などを見る限り、
それはどう見てもアケミちゃんのものだった。

俺は混乱した。

たしかに人形みたいな形跡はあったが、
こんなあからさまに安っぽい人形の姿では無く、
もっと質感的にも普通の人間っぽかったはずだ。

ここにあるのはなんだ?

どういうことだ?

“私”を神社に投げ込んだからお払いが出来たのか?

そんなご都合主義な事がありえるのか?

頭の中が「?」でいっぱいになった。

が、目の前にある現実は変わらない。

そうこうしていると警察がやってきた。

俺も一応目撃者というか
ある意味被害者なので、
色々と事情を説明したのだが、
当然意味不明すぎて警察も信じてくれない。

アケミちゃんらしきものを轢いてしまった人も、
あまりにも意味不明で何が起きているのか理解できないらしく、
なんかちょっと興奮気味に警察に何か話していた。

ただ一つだけ不思議な事があった。

人形って普通は
手や足を胴体と繋ぐジョイント部分ってものがあるよな?

この人形、
警察も不思議に思っていたようだが、
そういうジョイント部分が一切なかった。

つまりどうやって人の形に接続されていたのかが
さっぱりわからない。

アケミちゃんのあの姿からして、
中に何か入っていたんじゃないかとか、
色々怖い想像をしてしまうのだが、
今となっては何も解らない。

そもそもこの人形の残骸は、
そのまま警察が証拠品として持ち帰って行ってしまい、
その後どうなったかわからないからだ。

なんともあっけない幕切れなのだが、
実はこの後何も無い。

自宅に帰ってみると
どうもあの騒ぎを誰かが通報したらしく、
警察がやってきていた。

そして部屋に残されていたアケミちゃんのバッグを
証拠品として持って行ったのだが、
結局身元がわかるようなものは何一つ無かったらしい。

ただ携帯に関して
後から変な事を教えてもらった。

アケミちゃんの持っていた携帯、
もう何年も前に解約したものらしく、
書類上はとっくに廃棄されているはずのもので、
通話を受信できるような代物ではなかったらしい。

その後現在まで、
俺はアケミちゃんに出会うことはありません。

ただし、
今でも急に人気が無くなったり、
元からあまり人気が無いような場所は
恐ろしくて近付けません。

人形に関しては、
いろいろと想像できる部分もあるのですが、
あまり憶測で書きたくないのと、
変に想像すると現実になりそうで怖いので、
そういう事はこれを読んでいるみなさんのご想像にお任せします。

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2019.10.17|Genre:|Thread:恐怖の体験話コメント(0)トラックバック(0)Edit
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