こんな話もある。
昔のことだが場所はひかえる。
利発な友人は、
趣味を活かして山を登って、
山である調査をするバイトをしていた。
その日もいつもどおり麓の集落の道を通って山に登った。
途中、道沿いに何軒か民家があったが、
そこの人たちが異様に敵対的。
会うと逃げる、
物陰から睨む、
子供が逃げる、
遊んでいる子供を大人が連れて逃げる、
散々な対応だった。
嫌な感じがして、彼は先をいそいだ。
その日の仕事を終えて、
調査本体と合流するために登ってきた道をおりてきた。
「また、あんな対応を受けるのかな?嫌だな」
と考えながらおりていると、
途中から体の調子が悪くなってきた。
体がいたい、息切れがする、貧血気味だ。
彼は下山を急いだが体調はどんどん悪くなっていき、
その集落に着く頃には歩くのもつらくなった。
助けを求めるために最初の家(一番山側)を訪れたが応答なし。
家の中に人は居そうなのに。
次の家をやっとのことで行ったら、
庭で農作業をしていた人たちが彼をみとめると、
いきなり家の中に入って玄関をピシャリと閉めた。
彼は、玄関まで這うように行って声をかけた。
「すみません、体調が悪いのですが、ちょっと休ませてください。
水をいただけませんか。
電話をかしていただければと…」
応答なし。
少しして、
「出ないぞ!」
という男性の怒号が。
利発な友人は、
やっとのことで玄関の戸を叩いた。
「おねがいしま~す」
「この人、違うんじゃない、違うわ」
という女性の声がして、戸が開いた。
そこで朦朧となったそうだが、
つぎに意識がはっきりすると座敷に寝かされていた。
その家の人はとても親切だった。
「いやいや、悪かったね~。誤解してたわ」
彼らはバツが悪そうだった。
曰く。この集落には、
一人の男が二年に一回くらい下から登ってくる。
彼は、いつも同じ服と装備で
「あなたにそっくり」
「いや、あなただ」
友人は面食らった。
ここは初めてだった。
続けて言うには、
それはそれでいいのだが、
その後が問題だ。
あなたそっくりの登山者が来た後は、
その集落か、あるいは、
その周辺の集落の人がかならず一人死ぬ。
それが続くので怖くなって、
その人が来ると皆、避けるようになった。
その登山者は、
登ってはいくが同じ道をおりてこない。
彼らは、その男に挨拶をして、
やんわりと問いただしてみようともしたが、
まったく無反応で無視される。
手のほどこしようがない。
これが、登る時に友人に示した態度の理由だった。
その後、彼は集落の人の軽トラックに乗せてもらって、
近くの大きな駅まで送ってもらった。
次の日、雇用者(会社)に尋ねたが、
「そんな話は聞いたことが無い」
その日の彼の体調不良は、
後に、彼に大変なことももたらすのだが、
それは関係のない話だ。
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