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【超怖い話 実話】最後の遺書 長編 - 超怖い話 実話

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【超怖い話 実話】最後の遺書 長編

超怖い話 実話 長編


俺を含め、金の無い山好きにとって、登山道具の価格は、時に犯罪的だ。

いくつかの道具など、その価格や謳われている効能、機能からして

充分、詐欺罪で告発できるのではないかとさえ思える。

能書きが多い道具は特に注意が必要で、能書きが多い道具で、値段との比較で後悔しなかったのは

ビクトリノックスの多徳ナイフくらいのものだ。


IMG_3746.jpg

サイクルショップなどと言う、まあ古道具屋では、古い山岳用品が
時に陳列され、販売されている。

無論、格安で、これまでに一番成功した買い物は、プレスでなく鋼の打ち物の、鍛冶職人の名前が掘り込まれた古い八本爪のアイゼンだ。
購入後、20年を過ぎているが、ガタひとつなく、爪は研ぎを重ねて
実に具合よく、程よく雪や氷に食い込む。

知人はテントを買った。
古いタイプの一人用テントで、今時の物のように軽くも小さくもなく、それ一つで小さなザックの半分を
占めてしまう代物だが、何しろ安かった。

焚き火の煙が染み付いたような臭いがして、赤い色はあせていて、ポールは傷だらけだったが、小学生の小遣い並みの価格
に惹かれ、ついつい購入してしまったらしい。

ざっと広げてみると、破れもなく、細紐の状態も充分実用範囲だ。

彼より早くそれを使う事になった。
そのテントを借り、背負って歩き始めた時は、その重さに愕然としたものだ。
一人用のテントだとは信じられない重さで、いかに古いテントとはいえ、これはたまらんと、早々に計画を変更し、行程を大幅に削った。

星がよく見えそうな、林道脇の開けた台地で、ここらで寝るかと思いながらザックを降ろし
テントを引きずり出し、設営した。

コンロの火で簡単な夕食を仕立て、ぽつぽつ数を増やす星を眺めながら食った。
食い終わり、片付けが済むと、星を眺めたり、妄想に恐怖する以外に
さしてする事もなくなったので、座り、横になり、立ち上がり、星の光に心奪われ、少しの物音に怯え、ゆるやかに物思いにふけった。

そろそろ寝るかとテントにもぐり込み、巾着袋の口のようになった入口の紐を絞り、腹ばいになった。
懐中電灯を点灯し、ザックから飴玉を取り出した時、テント側面の赤い生地と床面のグレーの生地が
折り重なった部分に目が行った。

破れを探した時には、しっかり広がらなかった箇所だ。
黒っぽい色のマジックで何か書いてある。

乱れた字に胃袋がすぼまった。


妻へ

心配してるだろうか

バカなやつだとおこってるか

君が笑っていないだろうことが

なにより悲しい

伝えたいコトはもっとあるのに

ユビがうごかない

またかく



朝になり、テントをたたみ、そのまま下山した。

テントは軽かった。

またかく、とあるのは、また書く、という事だろうが、

目にした以外の書き付けがあるかどうか、友人もいまだに確認していない。

確認する気になど、到底なれない。

友人は、そのテントをしまい込んだまま、一度も使っていない。


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2018.10.13|Genre:|Thread:恐怖の体験話コメント(0)トラックバック(0)Edit
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