【超怖い話 実話】以前から憧れていたバーテンダーの修行に入った 短編 - 超怖い話 実話

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【超怖い話 実話】以前から憧れていたバーテンダーの修行に入った 短編

アレは2年前ぐらいかな。

当時キャバクラのボーイだった俺はとある

事情でそこを退社し、以前から

憧れていたバーテンダーの修行に入ったんだよ。

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なんせお酒もタバコも好きだし、ついでに女も好き。
これしかねぇ、とかあの時は本気で思ってた。

皆にとってはバーテンダーって興味はあるけど実態が見えない。
そんな職業だよな。
軽く説明するけど思っている程華やかな世界ではない。
水商売だし、やってる事は地味な事を積み重ねてお客の前でカッコつける。
地味な所をいかに見せずにカッコよく見せるか・・・。
本気で目指すなら遊んでる暇なんてなく、勉強の毎日。
給料雀の涙で頑張ってる。

本気で目指す人間じゃなきゃ到底続かない世界。
まぁこんな感じよ。

でな、当然新人の俺には先輩バーテンダーが色々教えてくれる訳よ。
その先輩ってのはそりゃぁもう、滅茶苦茶カッコいい人だった。
一つ一つの動きがカッコよくて地味な所もかっこよく魅せる。
その店の売り上げの2/3はその人のファンからだと言えるかもしれない。

顔も良ければ性格もいい。
こんな俺にも優しい物腰に敬語で丁寧に仕事を教えてくれる。
おまけに声もイイ。

性格の捻じ曲がった俺は当時から彼をライバル視して意地でも負けない、と無駄な努力をしていた。

そんなパーフェクト人間の先輩にも悩みはあった。
それはこの先輩に、どうして?と思えるような彼女の存在。
言っちゃ悪いがお世辞にも美人とは言えないどこにでもいそうな女性。
オマケに相当嫉妬深い性格で、普通バーテンダーの恋人はお店には来ないものなんだけど、その子は彼氏が心配と、毎日のように足しげくお店に通って来る。

先輩はそれをずっと悩んでるみたいで、バーテンダーという職業は客と話してなんぼ。
彼は客に嘘は決してつかないが、惚れさせてお店に通わせるという手段を好んで使う。
惚れた女性は太いお客さんになってくれるからね。

そこに睨みを利かせた彼女がいたら誰も得しない。
彼の悩みはそういう物だった。

営業時間が終わった時に一度聞いた事がある。

「彼女と別れないんですか?先輩ならもっと美人を狙えますよ」

「いや、愛してるからね」とニコリと笑い、話を切られる。

ある日、店の裏で先輩とその子が口論している所に出くわしてしまった事がある。
途中から聞き耳を立てたのでおおよそしか掴めなかったが、内容はこうだ。

先輩がお客の女性に悩みを打ち明けられ、お店を閉めた後二人でどこかへ消えた。
それが彼女さんがいなかった時の事であり、その日確実に浮気した・・・こういう事らしい。

その日初めて先輩が怒る所を見た、ついでに女性に手を上げたのも見た。

その後しばらくその子は店に現れなかったんだが、先輩は落ち込む事なく、いつもの顔で女性を喜ばせていた。
強い人だね。

だがそれも数日経った後、あの先輩が無断欠席をぶちかましてくれおった。
まさか先輩が飛んだ(バックれ)!?

もうお店はてんてこ舞いよ・・・。
シェイカーの振り方も料理も俺じゃなんにもわからん。
オーナーさんも緊急で店に出てきてくれたが・・・余計邪魔。

とりあえず今日は店を早く閉める、そして料理や酒はバーテンダー不在のため出来合いの完成された物を出す、という事でなんとかその場を凌いだが先輩とは相変わらず連絡も取れないまま数日がたった・・・。

急ごしらえのバーテンダーとしてカウンターに立ってた俺は先輩の見よう見まねでお客と話し、正直クソマズイ酒を出す為オーナーは修行セールと称しカクテルは格安で提供する羽目になった・・正直スンマセンオーナー・・・。

でな、なんとか形になってきた頃、先輩の彼女が来店してきたのよ。

「今は貴方がバーテンダーなのね」

「えぇ、先輩が急にいなくなってしまいましてハンチク坊主ですがカウンターに立たせてもらってます。彼女さんは先輩がどこへ行ったかご存知ないですか?」

「知ってるわよ、ただ、もうバーテンダーとして生きていけないわね・・・」

「それはどういう意味ですか?」

「フフッ、さぁね?」

彼女はそう言うと意味ありげに左手を出してきた。
その薬指には光る指輪。

あぁ!なるほど!

たしかに夜の世界に生きていては結婚は厳しいだろう。
昼夜は逆転するし収入もはっきり言って家族を養える程あるとは思えない。
足を洗いまともに生きる事を先輩なら選択するだろう。
でも一言くらい声かけてほしかったなぁ・・・。
なにも飛ばなくても・・・。

「おめでとうございます!そういう理由でしたか!」

「ウフフッ。有り難う」

「ではお店から一杯出させていただきます!未熟者ですがなにがいいですか」

「そうねぇ・・じゃあコレを使って最高の一杯を貰おうかしら」

ゴロン

あの時は思考が止まったね。
なんせそこに出されたのは小さいビニールに包まれた指だった。
血が抜かれているのか、全体が紫、というより黒ずんでいて恐らく親指だろう・・・それも男性の・・・。

「聞いていたんでしょう?貴方」

「え?」

「あの時確かに貴方がいた・・聞き耳を立てていた事は知っていたのよ」

会話を一旦途切れさせ、思考を纏めるためにタバコに火をつける。

「では、それを使って最高の一杯をお作りしましょう。マドラーとして使うだけですが、とても優しい味になるでしょう」

・・・終わった・・。
沈黙が痛い・・・。

「面白いわね、貴方」

「今日来たのは釘を打つためだったけど、貴方はプロみたいだから安心したわ」

そう言って彼女は最高の笑顔を見せ、指を持ち店を出て行った。

先輩とその子にはもう会う事はないんだろう。
夜の職業だと色んな人種に出会える。
そして出会いの数だけ別れもある。
色んな形でね・・・。

あれから先輩とその子がどうなったか、親しい友人達もわからないみたいだ。


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